インナーガレージを佐世保で|耐震と平屋の考え方
インナーガレージを調べると、「耐震性が落ちる」「やめたほうがいい」という記事が並びます。
読んでいくと、その多くは都市部の狭小地に建てる3階建てを前提にした説明です。佐世保・佐々で建てる場合、前提がまるで違います。比較的土地を取りやすいので3階建てにする理由がなく、そのかわり傾斜地という別の条件が付いてきます。
創業34年、設計から現場管理まで一貫して見ている立場から、この地域でインナーガレージを成立させる考え方を書きます。ガレージハウス全体の費用やタイプ分けはガレージハウスを佐世保でにまとめているので、ここでは構造の話に絞ります。
インナーガレージは「1階に大きな開口をつくる計画」だと考える
インナーガレージは、建物の中に車庫を組み込む形です。ビルトインガレージとも呼びます。同じものと考えて差し支えありません。
構造の側から見ると、要点はひとつです。1階の壁の1面に、車が入る幅の開口が必要になる。 車1台なら間口3m前後、2台なら5〜6m。その範囲には耐力壁を置きにくくなります。
建物は、上からの重さと、地震や台風の横からの力を、壁と柱を通して下へ流しています。1面から耐力壁が減ると、力の流れが偏りやすくなります。「インナーガレージは弱くなる」と言われるのは、この偏りのことです。
押さえたいのは、これが後から補強で足す話ではなく、配置で最初から解く話だという点です。減った分をどこで確保するか、建物全体で釣り合いが取れているか。耐力壁は量だけでなく、配置の偏り(偏心)、床の固さ、柱や梁のつなぎ方まで含めて見ます。2階に水回りのような重い部屋がある場合、開口の真上を避けておくと計画が楽になります(梁や柱の入れ方で成立させることもできます)。
整えた結果が足りているかどうかは、感覚ではなく数字で確かめます。壁の量、床の強さ、偏心率を計算で確認し、条件によっては構造計算まで行います。等級の考え方は耐震等級3は必要かで詳しく書いています。
佐世保では、3階建ての話はほぼ当てはまらない
検索で上位に出てくる「ビルトインガレージは危ない」系の記事は、3階建てを前提にしたものがほとんどです。
理由ははっきりしていて、都市部は土地が狭いからです。敷地が20坪しか取れなければ、床は上に積むしかない。1階をガレージにして、2階3階に住む。上に2層分の重さが乗った状態で、1階に穴を開ける。だから条件が厳しくなります。
佐世保・佐々では、その前提が成り立ちません。都市部に比べれば土地は取りやすく、平屋か2階建てで必要な床が収まる敷地が多くあります。
階数が減れば、1階が背負う重さも減ります。 一般には、開口を取ったときの影響が小さくなり、選べる間取りの幅が広がります。同じ「インナーガレージ」という言葉でも、都市部の3階建てとこの地域の平屋では、難易度がまるで違います。
とくに平屋とインナーガレージは相性がいい。上に乗る階がないので、開口の制約が緩くなります。屋根の勾配をそのまま活かして、ガレージの天井を高く取ることもできます。ただし平屋でも、大屋根や壁の偏った配置が重なれば検討は必要です。階数だけで決まる話ではありません。平屋そのものの考え方は平屋のメリット・デメリットにまとめています。
傾斜地なら、高低差そのものが使える
佐世保・佐々は平坦な宅地が多くありません。土地探しで高低差のある敷地に当たって、避けてきた方も多いと思います。
インナーガレージに関しては、この高低差が使いどころになります。
道路から1〜2m上がった敷地なら、下段にガレージ、上段に居室という組み方ができます。掘るのではなく、もともとある段差を利用する形です。設計によっては、ガレージの壁が土を留める役割を兼ね、擁壁の工事とガレージの工事が一部重なります。土地の弱点として値引き材料になっていた高低差が、そのまま使いどころに変わる。傾斜地の読み方という点ではスキップフロアとも考え方が重なります。
ただし条件があります。土を留める壁を兼ねるなら、木造ではなく鉄筋コンクリートの壁として、土の圧力・建物の重さ・防水と排水まで含めて検討することになります。普通の壁より手数が増えるということです。
既存の擁壁がある土地なら、まずその擁壁が健全かどうかから確認します。古い空石積みの擁壁だと、上に建物を載せることや、すぐ近くに建てて荷重の影響範囲に入ることを前提に作られていないことがあります。ここを飛ばすと、後から計画を大きく見直すことになります。
住みごこちの弱点は、排気・音・湿気に出る
構造が成立しても、暮らし始めてから出てくる不満は別のところにあります。ここは弱点として先に知っておいたほうがいい部分です。
排気。ガレージと居室をドア1枚でつなぐと、エンジンをかけた時の排気が室内に入る経路ができます。換気設備と、ドアの気密の両方で対応します。
音。シャッターの開閉音は思ったより響きます。朝早く出る、夜遅く帰るという使い方をするなら、寝室の真下や隣にガレージを置かない。これは間取りの段階でしか直せません。
湿気。雨の日に濡れた車をそのまま入れるので、水と湿気が建物の中に持ち込まれます。床に勾配と排水を取り、換気を確保しておかないと、湿気がこもって物置部分にカビが出ます。年間1,989mmの雨が降る土地なので、ここは軽く見ないほうがいい(気象庁 佐世保の平年値・1991〜2020年)。
よくご相談いただくのが、潮風で車が傷むのを避けたいという話です。海が近い土地では、屋根と壁で囲えるインナーガレージを選ぶ動機がそこにあります。
容積率が足りないときは、車庫の緩和が効く
「ガレージのぶん、住む床が減るのでは」と聞かれることがあります。容積率については、緩和があります。
建築基準法施行令第2条第1項第4号ただし書により、自動車車庫等の用途に供する部分の床面積は、容積率算定の延べ面積に算入しません。その限度は同条第3項第1号で定められていて、敷地内の建築物の各階の床面積の合計の5分の1までです(出典:e-Gov 建築基準法施行令)。
つまり、ガレージを作ったぶんがまるまる住む床から引かれるわけではありません。5分の1に収まる範囲なら、容積率算定上は不算入にできます。
注意点も2つあります。5分の1を超えた部分は算入されること。それと、これは容積率の話であって、建ぺい率や斜線制限は別だということです。用途地域や前面道路の幅、防火の指定によっても変わるので、敷地が決まっていればその土地の条件で計算してお見せできます。
よくあるご質問
Q. インナーガレージにすると耐震等級3は取れませんか。
取れないわけではありません。開口の位置と耐力壁の配置を含めて計画すれば、等級3で成立する場合があります。開口の幅、建物の形、屋根の重さ、地盤と基礎の条件によって変わるので、一律には言えません。逆に言うと、確かめずに感覚で開口を広げると成立しなくなります。等級を取りたいのであれば、間取りを決める前の段階で伝えてください。順番が逆になると、間取りを直すことになります。
Q. 後からガレージを足すことはできますか。
増築という扱いになります。防火地域・準防火地域の外で床面積10㎡以内なら確認申請が不要になる場合もありますが、車が入る大きさだとまず超えるので、申請が必要と考えておいてください。既存部分との接合、基礎の一体化、構造の釣り合いの取り直しも発生します。将来足す可能性があるなら、最初にその位置と基礎だけ想定しておく方法もあります。
Q. 車1台と2台で何が変わりますか。
間口が3m前後から5〜6mに広がるので、構造の検討がひとつ重くなります。開口が広い分、その面に耐力壁を置ける余地がさらに減るためです。2台にするか、1台+屋外に1台分の土間にするかで、建物の作りが変わります。台数は早い段階で決めておくと、設計が回りやすくなります。
まとめ
インナーガレージで検索して出てくる「危ない」「やめたほうがいい」は、都市部の狭小3階建てを前提にした話です。佐世保・佐々では条件が違います。
この地域で押さえるのは3点です。
- 階数を積まない(平屋・2階建てなら1階の負担が軽く、開口を開けやすい)
- 高低差を使う(下段ガレージ・上段居室。擁壁と工事が重なる。ただし既存擁壁の健全性は先に確認)
- 排気・音・湿気は間取りで解く(後から設備では直りにくい)
大成住宅の完全自由設計(誂 -あつらえ-)では、敷地の高低差や車の台数から逆算して、構造が成立する形を先に決めてから間取りを起こします。営業担当を通さず、建築士・施工管理技士が直接お話を伺います。
土地が決まっている方は敷地図を、これから探す方は候補地の資料をお持ちください。インナーガレージが素直に納まる土地かどうかは、図面を引く前に判断できます。
