介護保険の住宅改修|申請の順番と進め方
親や自分の体が思うように動かなくなってきて、手すりを付けたい、段差をなくしたいと考えたとき、多くの方が知っているのは「介護保険で工事費の一部が出る」というところまでです。つまずきやすいのは、その先です。
介護保険の住宅改修は、原則として工事の前に申請します。工事を終えてから申請すると、やむを得ない事情がある場合を除いて支給の対象になりません。手続きは誰がどの順番で動くかが決まっています。ケアマネジャーの役割から、20万円という金額の中身、工務店に何を用意してもらうかまで、順を追って書きます。
手続きが動く順番
介護保険の住宅改修は、次の順番で進みます。
1. 要介護認定を受ける(まだの場合)。要支援1・2、要介護1〜5のいずれかの認定を受けていることが前提です。認定を受けていない場合は、まず市町村の窓口か、お住まいの地域包括支援センターで要介護認定の申請をします
2. ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談する。どこに困っていて、何をしたいかを伝えるところから始まります。認定を受けていても、居宅介護支援事業所と契約していなければ担当は決まっていません。要支援の方は地域包括支援センターが窓口になります
3. 施工事業者を選び、見積もりを依頼する。工務店やリフォーム会社に現地を見てもらい、工事内容と金額を見積書にまとめてもらいます
4. 「住宅改修が必要な理由書」を用意する。作成できるのは、介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上、その他これに準ずる資格等を持つ人です。所属ではなく資格で決まりますが、施工する側が作成した理由書を受け付けるかは市町村の運用で分かれます。通常はケアマネジャーか地域包括支援センターに依頼することになります
5. 市町村へ、工事の前に申請する。事前申請書・工事費見積書・理由書・工事予定箇所の写真(着工前の日付入り)・住宅の平面図(見取図)を添えて提出します。持ち家でない場合や、住宅の所有者が同一世帯でない場合は、所有者の承諾書もこの段階で要ります。市町村が内容を確認し、結果を教えてくれます
6. 工事に着工し、完成させる。事前申請の結果を受けてから着工します
7. 市町村へ、工事の後に支給申請をする。支給申請書・領収書・工事後の写真(こちらも日付が分かるもの)を提出し、住宅改修費の支給額が決まります。佐々町では、事前に承認された内容から変更があった場合、完成後の工事内訳書・理由書・見取図をあらためて出すことになります
(出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」、
佐世保市・佐々町で進めるなら、所有者の承諾書が要る場合は着工前にそろえる前提で動きます。厚生労働省の資料では承諾書が工事後の書類に並んでいますが、この2つの自治体はどちらも事前申請の添付書類にしています。様式も自治体ごとに違うので、別の市町村で申請する場合はその窓口の案内に従ってください。
工務店が担うのは、3の見積もり、6の施工、そして市町村に出す工事関係の書類です。着工前(5)は見積書・平面図(見取図)・着工前の写真、完成後(7)は完成後の写真と領収書。佐々町で事前承認後に改修内容が変わった場合は、完成後の工事内訳書も要ります。申請の主体は利用者本人です。ケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、地域包括支援センターに相談すると担当につないでもらえます。なお、やむを得ない事情がある場合に限り、工事後の申請が認められることもありますが、通常は事前申請が前提です。
工事代金の払い方も先に決めておくところです。支払方法には「償還払い」と「受領委任払い」の2つがあります。償還払いは、完成後にいったん全額を施工業者へ支払い、そのあとで住宅改修費の支給を受ける方法です。受領委任払いは、利用者が負担割合分だけを施工業者へ支払い、残りを市町村から施工業者へ直接支払う方法です。
佐世保市・佐々町はどちらも両方の方法を案内しています(佐世保市 住宅改修費支給申請書(様式)について、佐々町 介護保険住宅改修について)。手元から出る金額が大きく変わります。使えるかどうかは市町村の制度だけでなく、施工業者がその扱いに対応しているかにも左右されます。佐世保市は、介護保険の給付制限を受けている方は受領委任払いを利用できないとしています。申請の前に、窓口と施工業者の両方に確認してください。
実際に窓口とやり取りするのは、離れて暮らす子や、同居する配偶者になることが多くあります。相談も打ち合わせも家族が代わりに動いて構いません。ただし理由書には本人の生活状況が反映されるので、ケアマネジャーが本人の様子を確認する機会(自宅訪問や聞き取り)は要ります。
5の段階で市町村が内容を確認して結果を知らせるというのは、見積もりの工事内容が住宅改修の6区分(手すりの取付け/段差の解消/床・通路面の材料の変更/引き戸等への扉の取替え/洋式便器等への便器の取替え/これらに付帯して必要になる工事)に当てはまっているかを見る作業です。ここで内容が対象外と判断されると、着工しても支給されません。見積書と理由書の内容がずれていないかを、申請の前にケアマネジャーと工務店の双方で確認しておくと、やり直しの手間を減らせます。
20万円は「支給される額」ではありません
介護保険の住宅改修には、支給限度基準額が生涯20万円と決まっています。ここを「20万円もらえる」と読み違えると、あとで想定より手出しが増えます。
20万円は、対象になる工事費の上限です。保険から出るのは、その工事費のうち負担割合に応じた分だけです。原則は9割(上限18万円)で、所得に応じて8割(上限16万円)・7割(上限14万円)になる場合があります(同上)。負担割合が1割の方が20万円ぶんの工事をしたなら、手元から出るのは2万円という計算です。
20万円の枠は、原則として1人につき生涯で1枠です。ただし限度額が残っていれば、複数回に分けて申請できます。まず浴室の手すりだけを付けて、翌年に廊下の段差解消を追加する、という進め方もできます。
枠が一度きりでない場合も2つあります。要介護状態区分が3段階以上重くなったとき、転居したときは、それぞれあらためて20万円までの枠が使えます。1〜2段階の変化では枠は戻りません。
段階を分ける進め方には注意点もあります。1回目の申請で使った金額と残りの枠は市町村側で管理されているので、2回目以降の申請でも理由書と見積書は毎回必要です。「前回申請したから今回は省略できる」ものではありません。また、枠を使い切っていても、要介護状態区分が3段階以上重くなるか転居するかしなければ、追加の給付は受けられません。将来の見通しがあるなら、1回でまとめて改修するか、段階的に進めるかを、ケアマネジャーと相談しておくと計画を立てやすくなります。
工務店に頼むときに用意してもらうもの
申請書類のうち、見積書・図面・工事の前後の状態が分かる写真・工事の金額に関わる書類は工務店の役割です。
- 工事費見積書(厚生労働省の資料では「複数事業所からの見積もり提出を促進」とされています。義務ではありませんが、佐々町は工事費の見積りが高い場合に複数業者から見積書を取ってもらうことがある、としています。求められる可能性を見込んで動くと手戻りが減ります)
- 工事前の状態が分かる写真(着工前に、日付が分かる形で撮ります)
- 住宅の平面図(見取図)。写真だけでは工事する場所が分からないので、図面も別に要ります
- 工事後の写真(着工前に撮った箇所と対応するように、同じ場所を同じ向きで撮ります。こちらも日付が分かるもの)
- 領収書(利用者が支払った金額を示す書類です。完成後の支給申請で要ります)
- 工事内訳書(佐々町では、事前に承認された内容から変更があったときに、完成後の提出書類として案内されています。佐世保市の案内では「工事内訳書」という書類名は出てこず、工事費見積書について「工事箇所ごとに区分されていること」としています。厚生労働省の資料では工事後の提出書類として示されているので、申請先の案内に従います)
これらは市町村への申請に添える資料なので、着工前に見積書・平面図(見取図)・工事前の写真を、完成後に工事後の写真と領収書を、それぞれ用意してもらいます。申請先や変更の有無によっては工事内訳書も求められます。理由書はケアマネジャーが作成するものですが、工務店の見積もり内容と食い違わないよう、事前にケアマネジャーとすり合わせておくと、申請のやり直しが減ります。
佐世保市・佐々町には、介護保険とは別に住宅リフォームの補助金制度もあり、バリアフリー改修が対象になる場合があります。こちらも着工前の申請が原則です。ただし同じ工事費に両方を重ねて使えるとは限りません。対象の箇所や費目を分ければ併用できる場合もありますが、「20万円と20万円で単純に40万円」とはならない前提で、対象の範囲を制度ごとに確認します。一方、みらいエコ住宅2026のリフォームのように、工事完了後の交付申請が基本になる国の制度もあります。申請のタイミングは制度ごとに違います。あわせて使える制度がないか確認したい場合は、リフォーム補助金ガイドにまとめています。
大成住宅では、技術者が直接現地を見て見積もりを作り、理由書の作成はケアマネジャーと連携して進めます。手すりの位置や段差解消など対象になる工事の一覧は、バリアフリーリフォームのページにまとめています。
よくあるご質問
Q. ケアマネジャーがまだ決まっていません。誰に相談すればいいですか?
まず市町村の介護保険の窓口か、地域包括支援センターに相談してください。要介護認定をまだ受けていない場合は、認定の申請からになります。すでに認定を受けている方は、居宅介護支援事業所を紹介してもらい、契約したうえで担当のケアマネジャーが決まります。要支援の方は地域包括支援センターが窓口です。
Q. 先に工事を始めてしまいました。あとから申請できますか?
原則できません。介護保険の住宅改修は着工前の申請が前提で、着工したあとや工事を終えてから申請しても支給されないことになっています。まだ契約や打ち合わせの段階で着工していなければ、これから申請して間に合います。やむを得ない事情がある場合の例外はありますが、通常は事前申請が必要です。まずは市町村の窓口に相談してください。
Q. 賃貸住宅でも申請できますか?
所有者の承諾が得られれば申請できます。持ち家でない場合や、住宅の所有者が同一世帯でない場合は、承諾書が事前申請の添付書類になります。着工してから承諾が取れないと分かると手戻りが大きいので、見積もりの段階で話を通しておく流れです。
まとめ
介護保険の住宅改修で支給を受けるには、着工前に市町村へ申請することが前提です。順番は、要介護認定を受ける→ケアマネジャーへ相談する→施工事業者を選び見積もりを取る→理由書を用意する→事前申請する→着工する→完了後に支給申請する、と決まっています。20万円は支給される額ではなく対象工事費の上限で、実際に保険から出るのは負担割合に応じた分です。
手すりをどこに、どの高さで付けるかは手すりの取り付け費用|位置・高さと下地に、対象になる工事の全体像はバリアフリーリフォームにまとめています。見積もりとケアマネジャーとの連携を含めて相談したい場合は、お問い合わせからご連絡ください。
