屋根はカバー工法か葺き替えか|費用の差
屋根の見積りを取ると、「カバー工法」と「葺き替え」という言葉が並びます。どちらも古くなった屋根をやり直す工事ですが、中身も費用の掛かり方もまったく違います。どちらになるかは好みで選べるものではありません。今の屋根材が何か、下地が傷んでいるかどうかで、選べる方が最初から決まっていることがほとんどです。佐世保市・佐々町で屋根の相談を受ける中で、この分かれ目を整理します。
金額の内訳がどう違うかは、記事の後半にまとめています。
屋根材が何かで、使える工法が変わります
カバー工法は、既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねる工事です。重ねられるのは、表面が比較的平らなスレート(コロニアルなど)や金属屋根に限られます。瓦は表面に大きな凹凸があり、その上に別の屋根材を水平に重ねることができません。瓦はそれ自体が重い屋根材でもあり、さらに重ねて重くする選択肢も現実的ではありません。瓦屋根をやり直す場合は、葺き替えが前提になります。
金属屋根の上に新しい金属屋根を重ねるケースもありますが、既存の屋根材に浮きや大きな凹凸があると、その上に重ねた屋根材が波打つことがあります。カバー工法を選ぶ場合も、既存屋根の表面がどれだけ平らに保たれているかは、現地で確認する項目のひとつです。
下地の話に入る前に、屋根材の年代にも触れておきます。石綿(アスベスト)は平成18年(2006年)9月から輸入・製造・使用などが禁止されていて、それより前に着工した建物では石綿が使われている可能性があります(厚生労働省 建築物等の解体・改修工事に対する石綿対策)。
屋根材については、それより早く手が打たれていました。住宅屋根用化粧スレートは、平成16年(2004年)10月に石綿を含む製品の製造等が禁止された10品目のひとつです(石川産業保健総合支援センター(労働者健康安全機構))。ただし、現場で含有の有無を判断するときの基準日は平成18年9月1日のほうです。2004年から2006年の間に葺いた屋根だから安心、とは扱いません。
まず見るのは建物の着工日です。着工日が平成18年9月1日以降だと確認できれば、目視などによる調査を省けます。ただしこれは手順を省ける話で、屋根材そのものに石綿が入っていないと言い切るには、製品を特定したうえで、メーカーの証明や成分情報と照合するか、その製品の製造年月日が平成18年9月1日以降であることを確認します。建物が古くても、屋根を後から葺き替えていて製品が特定できれば、その屋根材について判断できます。
事前調査そのものに規模の要件はありません。工事の対象になる部材を、設計図書などの文書と目視で調べ、記録を3年間保存します。規模の要件があるのは調査結果の報告のほうで、床面積80㎡以上の解体工事か、請負金額100万円以上の改修工事が対象です(令和4年4月から。厚生労働省リーフレット)。なお既存の材料を外さず新しい材料を足すだけの作業は調査が不要とされていますが、カバー工法でも棟板金や雨押えは一度外すので、既存の材料を外す工程があれば対象になります。
調査は誰がやってもいいわけではありません。建築物の事前調査は、令和5年10月から、厚生労働大臣が定める資格者に行わせることが義務になっています。資格のうち「一戸建て等石綿含有建材調査者」は、一戸建て住宅・共同住宅の住戸の内部に限定されているので、屋根はこの資格だけでは調べられません(厚生労働省リーフレット)。見積りのときに、誰が調査するかも説明を受けておくと、工事の中身が把握しやすくなります。含有の有無で撤去と処分の扱いが変わるので、葺き替えの費用と工期に影響します。
下地とルーフィングが生きているか
雨漏りしている、または過去にしていた屋根は、表面だけの問題では済まないことがあります。屋根材の下には防水紙(ルーフィング)があり、その下に屋根の骨組みとなる野地板があります。ここまで水が回って腐っていると、上から新しい屋根材を重ねても原因は残ったままです。
カバー工法は、この野地板の状態を確認しないまま進めると、傷みを覆い隠すだけの工事になりかねません。着手前に屋根に上がって下地を叩いたり、雨漏りの跡がある場合は棟や谷の板金を外して確認したりする工程が要ります。屋根材を一部めくって野地板の色や硬さを見ることもあります。天井裏に雨染みが残っている場合は、そこから水の通り道を推測する手がかりにもなります。雨漏りの原因そのものの探し方は、雨漏りの修理費用は何で決まるかで書いています。
工事を始めてから、想定より野地板の傷みが広い範囲に及んでいると分かることもあります。その場合は、その時点でいったん状況をお伝えし、直す範囲を相談してから工事を進めます。
屋根の上は自分では見えない場所です。訪問してきた業者に「今すぐ工事しないと危ない」と言われても、その場で契約を決める必要はありません。下地の状態は、写真や動画を見せてもらった上で、日を改めて判断できます。
重さの違いが建物に与える影響
カバー工法は既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねるため、屋根そのものが二重になり、その分重くなります。葺き替えで瓦から金属屋根など軽い屋根材に替える場合は逆で、建物の上のほうにある重さが減ります。屋根の重さは、地震のときの揺れ方に関わる要素のひとつです。建物の上のほうが軽くなること自体は事実ですが、それがどれだけ効くかは建物ごとに違います。
どこまで改善するかは建物の構造や現状の耐震性能によって変わるため、ここでは踏み込みません。重さが変わる方向だけ押さえておいてください。逆に、すでに重い瓦屋根の建物にカバー工法でさらに屋根材を重ねることは、選択肢としてそもそも扱われません。瓦にカバー工法が使えない理由は、凹凸の形状だけでなく、この重さの面からも説明できます。
費用の内訳の違い
金額は屋根の面積や形状、傷み具合を見ないと出せません。ここでは、何にお金がかかるかの違いを整理します。
- 足場:どちらの工法でも屋根に上がって作業するため必要です。ここは差が出ません。
- 既存屋根材の撤去・処分:葺き替えは既存の屋根材をすべて剥がして運び出すため、撤去費と処分費がそれぞれかかります。カバー工法は既存の屋根材を剥がさないため、この2項目は発生しません。
- 下地補修:葺き替えは下地を全部見ながら進められるので、傷んだ野地板を必要な範囲で直せます。カバー工法は既存屋根の上に重ねるため、手を入れられる範囲が限られます。着手前にどこまで下地を確認できるかで、仕上がりが変わります。
- ルーフィング(防水紙):葺き替えは下地の上に新しく張り直します。カバー工法は、既存の屋根材の上に新しいルーフィングと屋根材を重ねるため、防水紙も屋根材も二重構造になります。
- 屋根材本体:どちらの工法でも新しい屋根材の費用がかかります。
- 棟板金・雨押えなどの板金:どちらの工法でも発生しますが、葺き替えは下地からやり直すため、板金の納まりも作り直します。
将来の話も含めておきます。カバー工法を選んだ屋根を次にやり直すときは、重なった2枚の屋根材を両方撤去することになります。そのときの撤去・処分の量は、葺き替え1回分より増えます。
工期は、撤去の日数がないカバー工法のほうが一般に短くなります。屋根を開けている間は雨を防げないので、梅雨や台風の時期は着工の時期から相談することもあります。
相場のレンジを知りたい場合も、屋根の面積・勾配・傷み具合・使う屋根材のグレードで金額は変わるため、実際に屋根の上を見てからでないと出せません。同じ「屋根一式」という見積り表記でも、この内訳のどこまでが含まれているかで中身が違うことがあります。見積りを比べるときは、撤去・処分・下地補修が別項目になっているかを確認しておくと、後から追加費用が出にくくなります。外壁・屋根リフォームのページから現地確認をご相談いただけます。
よくあるご質問
Q. 自分で屋根に上がって、カバー工法か葺き替えかを判断できますか?
屋根の上は勾配があり、瓦やスレートは体重で割れることがあります。下地の傷み具合は、屋根材を一部外すか天井裏から確認しないと分からないことも多く、判断には現地での確認が要ります。ご自身で屋根に上がるのは避けてください。
Q. 雨漏りしている屋根でも、カバー工法にできますか?
下地まで傷んでいなければ選べる場合があります。ただし、雨漏りの原因を特定しないまま工法だけ決めると、原因を覆ったまま工事することになりかねません。原因の調べ方は雨漏りの修理費用は何で決まるかにまとめています。
Q. 見積りで、あとから金額が増えやすいのはどこですか?
葺き替えでは下地の補修です。既存の屋根材をはがすまで野地板の傷み具合は分からないため、見積り時点では想定でしか入れられません。石綿を含む屋根材だった場合も、撤去と処分の扱いが変わります。カバー工法は既存屋根を残すぶんこの振れ幅は小さくなりますが、そのかわり将来の葺き替えで二重ぶんの撤去費がかかります。どちらも、増えやすい項目を見積書の中で分けて出しておくと、あとの話が早くなります。
まとめ
屋根の工法は、今の屋根材が瓦かどうか、下地とルーフィングが生きているかどうかで、選べる方がほぼ決まります。カバー工法は屋根が重くなり撤去費がかからない分、将来の葺き替え時にまとめて撤去することになります。葺き替えは下地から作り直せる代わりに、撤去と処分の費用と日数がかかります。
石綿は、着工日や屋根材の製品情報を根拠に扱いを決めます。建物の着工が平成18年9月1日より前で製品も特定できない場合は、含有を前提にした撤去・処分の費用と工期が見積りに入ります。判断に迷う場合は、屋根に上がって下地の状態を見てからご相談ください。
佐世保市・佐々町で屋根のリフォームをお考えでしたら、お問い合わせください。塗装・葺き替え・カバー工法まで外壁・屋根リフォームにまとめています。
