相続した空き家の3000万円控除|要件と期限
相続した実家を売ったとき、譲渡所得にかかる税金が重くのしかかることがあります。親が建てた家は取得費が分からないことも多いためです。ここで使えるのが、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です(出典:国税庁 No.3306)。対象は昭和56年5月31日以前に建てられ、親が一人で住んでいた家。期限は二重にかかり、先延ばしにするほど選択肢が減ります。2026年7月時点の制度をもとに、佐世保市・佐々町の工務店の立場で要件と段取りを整理します。税額の判定は税理士・税務署の領域なので、建物と土地の側から材料を出す前提で書いています。
相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除とは
被相続人が一人で住んでいた家を相続し、それを売却したときに、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる制度です。相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、令和6年1月1日以後の譲渡について2,000万円までとなります(出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。
国土交通省は「空き家の発生を抑制するための特例措置」として案内しています(参考:国土交通省・空き家の発生を抑制するための特例措置)。空き家のまま持ち続けるより、売って流通させるほうを税制で後押しする組み立てです。金額の大きさより先に押さえたいのは、要件を一つでも外すとまるごと使えなくなる点です。
使える条件は、建物・売り方・期限に分かれる
建物の条件
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと——旧耐震基準の時代に建てられた家が対象です。佐世保・佐々でも、この年代の木造住宅は数多く残っています。
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと——分譲マンションは対象外です。
- 相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと——親が一人で住んでいた家、が前提です。同居していた家族がいた場合は使えません。
要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続開始の直前に居住していなかった場合でも、一定の要件を満たせば従前の居住用家屋として扱われます(出典:国税庁 No.3306)。施設に移ってから相続が発生したケースは、ここで救われることがあります。
売却代金と、売る相手の条件
- 売却代金が1億円以下であること——判定は1回の売買だけを見るのではありません。相続の時から、この特例の適用を受けて家屋またはその敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、分割して売った部分や他の相続人が売った部分も合算します。あとから合計が1億円を超えた場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告書の提出と納税が必要です(出典:国税庁 No.3306)。兄弟で持分を分けて別々に売る予定があるなら、先に合計額を確認してください。
- 「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと——親子や夫婦のほか、生計を一にする親族、売ったあとにその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人が含まれます。兄弟の一人が買い取ってそこに住む、という形は当てはまる可能性があるので、身内で処理する前に確認してください。
相続後の使い方と、他の特例との関係
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと——ここが実務で一番引っかかります。
- 売った家屋や敷地等について、他の特例の適用を受けていないこと——相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)や収用等の場合の特別控除とは、どちらかを選ぶ形になります。相続税を納めている場合はどちらが有利か変わるので、税理士・税務署に確認してから決めてください。
- 同一の被相続人から相続した家屋・敷地について、この特例を重ねて使っていないこと——一人の親から相続した物件で二度は使えません。
相続してから売るまでの間に、駐車場として貸した、親戚に住んでもらった。こうした事実があると、この特例は使えません。物置として人に使わせたようなケースも、貸付けに当たるかどうかで判断が分かれます。「空いているのはもったいないから、しばらく誰かに貸そう」という判断が、あとで大きな差になって返ってきます。売却を視野に入れているなら、引き渡しまでは空けたままにしておくのが安全です。
期限は二重にかかる
期限が二段構えになっている点に注意してください。
- 制度そのものの期限——平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡が対象です。
- 個別の期限——相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
どちらか早いほうが実質の締切です。この記事を書いている2026年7月の時点で、制度の期限まで1年半を切っています。売却は相談から引き渡しまで数か月かかることも珍しくありません。相続登記が済んでいない、相続人の間で話がついていない、といった状態からだと、さらに時間が要ります。引き渡し日から逆算して、いつまでに方向を決めるかを先に置いてください。
更地にして売るか、耐震改修して売るか
この特例には、建物の耐震性についての条件があります。原則は、譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。旧耐震の家をそのまま売るなら、耐震改修をして基準を満たしてから引き渡すのが基本の形です。ただし後述のとおり、令和6年の改正で売ったあとに間に合わせる道もできています。
もう一つの道が、建物を取り壊して土地として売る方法です。この場合、要件は家屋と敷地に分かれてかかります。家屋は相続の時から取壊し等の時まで、敷地は相続の時から譲渡の時まで、それぞれ事業・貸付け・居住の用に供していないこと。さらに取壊し等の時から譲渡の時まで、その敷地を建物または構築物の敷地の用に供していないことも要件です(出典:国税庁 No.3306)。更地にしたあと、売れるまでの間に月極駐車場として貸すといった使い方をすると、ここで外れます。
令和6年1月1日以後の売却では、売ったあとでも、その翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすか、家屋を全部取り壊せば対象になる場合があります。買主側で解体や耐震改修を行う段取りでも間に合う形です。ただし買主の協力が前提になるため、国土交通省はトラブル防止のために特約等を定めておくことを案内しています。耐震改修を選ぶ場合は期間内に工事を実施することが要件で、証明書を用意すれば足りるというものではありません(参考:国土交通省・空き家の発生を抑制するための特例措置)。
どちらを選ぶかは、建物の傷み具合と土地の売れ方で変わります。傷みが浅く図面も残っているなら、耐震改修して中古住宅として売るほうが手取りが多くなる場合があります。逆に雨漏りやシロアリで構造まで傷んでいるなら、更地にしたほうが買い手はつきやすい。建物を見ないと判断できません。
ひとつ注意点があります。建物を解体して更地にすると、住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例から外れ、翌年度以降の土地の固定資産税が上がる可能性があります(参考:総務省・固定資産税の概要)。売却の見通しが立たないまま先に壊すと、売れるまでの保有コストが増えます。解体の費用と補助制度は「空き家解体の費用と補助金ガイド」にまとめています。
手続きで先に押さえておくこと
確定申告のときに、物件がある市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要になります。佐世保市の物件なら佐世保市へ、佐々町の物件なら佐々町へ申請します。被相続人が相続開始直前に居住していたことや、その後に事業・貸付け・居住の用に供されていないことを示す資料を添えます。電気やガスの使用中止日が分かる書類を求められることもあるので、解約時の控えは捨てずに置いておいてください。
税額の計算や他の特例との関係は、個別の事情で変わります。適用の可否は税務署または税理士にご確認ください。当社は建物の状態と土地の売れ方について判断材料をお出しする立場です。
佐世保・佐々で、解体・売却と合わせて考える
この特例が使えるかどうかは、税金の話であると同時に建物の話でもあります。耐震改修して売るのか、壊して土地で売るのか。判断には、建物がどこまで傷んでいるか、改修にいくらかかるか、その土地はいくらで売れそうかという材料が要ります。税務の判定は税理士・税務署、建物の状態と土地の売れ方は建築と不動産の側。役割が分かれているので、両方そろわないと比べられません。
大成住宅は佐世保市・佐々町を中心に、創業34年、注文住宅からリフォーム、不動産まで手がけてきました。建築士と宅建士に加えて、既存住宅状況調査技術者の資格を持つ社員が在籍しているので、建物の状態を調べたうえで、改修して売る場合の工事範囲と、解体して土地で売る場合の段取りを並べてお見せできます。設計、見積もり、協力会社との調整、現場管理まで当社が窓口となって進めます。
実家をどうするかがまだ決まっていない段階なら「実家の空き家どうする?売る・貸す・直す・建てるの判断」から、遠方に住んでいて進め方が分からない場合は「実家じまいの費用と進め方|遠方に住む子世代の手順」から読んでいただくと順序が見えます。家財が残っている段階なら「実家の片付けはどこから始める?業者選びと費用」もあわせてご覧ください。相談窓口は「実家・空き家・相続不動産のご相談」です。
よくある質問
Q. 相続から3年が過ぎました。もう間に合いませんか?
期限は「3年ちょうど」ではありません。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までが期限なので、3年を過ぎていても、その年の12月31日までなら間に合う場合があります。たとえば相続開始が2023年5月なら、3年経過は2026年5月、期限は2026年12月31日です。ここは誤解の多いところなので、まずご自身の相続開始日から数えてみてください。期限を過ぎている場合でも売却はできます。売り方で手取りは変わるので、土地と建物の状態を見たうえで整理します。
Q. 兄弟3人で相続しました。控除額はどうなりますか?
相続または遺贈により被相続人居住用家屋および敷地等を取得した相続人の数が3人以上である場合、令和6年1月1日以後の譲渡では2,000万円までとなります(出典:国税庁 No.3306)。人数の数え方は取得した人が対象です。個別の判定は税務署にご確認ください。
Q. 空き家のまま置いておくと、何か不利になりますか?
管理されない状態が続くと傷みが進み、解体費も改修費も上がります。制度の期限も近づきます。売るつもりがあるなら、早めに建物の状態を確認しておくほうが選べる手は多く残ります。
この特例は効果が大きい一方で、途中で貸してしまう、期限を過ぎる、といった理由で落ちます。使えるかを早めに切り分け、使えるなら逆算して動く。使えないなら別の出口を探す。この判断を先にやっておくと、あとが軽くなります。
日中お電話に出にくい方は、お問い合わせフォームまたは公式LINEから、次の内容を分かる範囲でお送りください。全部そろっていなくても構いません。
- 物件の所在地(佐世保市・佐々町など)
- 建物の建築時期(昭和56年5月31日より前かどうか)
- 相続が発生した時期
- 相続開始の直前に、被相続人がお一人で住んでいたか
- 相続後に人に貸したり住んだりしていないか
- 相続人の人数と、相続登記が済んでいるか
建物の調査、改修費の見積もり、解体の段取り、売却の査定まで、必要な部分だけご利用いただけます。税務の判定は税理士・税務署と並行して進めてください。
